「あれこれ試してみたけれど、どうしてもゴールに辿り着けない……」
「どの手順が一番効率的なのか悩んでいたら、実はどんな順番で解いても同じだった……」
算数や数学のパズルを解いていると、こうした不思議な体験をすることがあります。
その背後には、中学入試の難問やプログラミングの基礎理論でも極めて重要視される強力な数学の武器、「不変量(インバリアント)」が隠れています。
今回は、身近な「板チョコ」と「10円玉」を使った2つの問題を用意しました。ぜひ手元で想像しながら(あるいは実際に10円玉を並べて)考えてみてください。
板チョコの分割パズル(手数の不変量)
🍫 【問題】最短でバラバラにするには何回割ればいい?
縦4マス × 横6マス(合計24ピース)の板チョコがあります。
溝に沿って直線で1回割ると、チョコは2つの破片に分かれます。
(※割った破片を重ねて一気に割るようなズルは禁止とします)
すべてバラバラの24個のピースにするには、最短で何回割る必要があるでしょうか?
💭 「真ん中から割っていった方が効率がいい?」「端から1列ずつ折ると手数が多くなる?」……考えがまとまったら、下の解説を開いてみてください。
👉 答えと解説を見る(クリックで開きます)
【答え】どんな割り方をしても絶対に「23回」
どこをどのように割っても、絶対に変わらない事実が存在します。
それは、「1回割るたびに、チョコの破片が必ず『1個』増える」ということです。
- 割る前:チョコのかたまりは 1個
- 1回割ると:かたまりは 2個(+1個)
- 2回割ると:かたまりは 3個(+1個)
- ……
- ゴール:バラバラのピースが 24個
破片を1個から24個にする(23個増やす)には、どう工夫しても絶対に「23回(24 – 1 回)」割る必要があります。
最短も最長もなく、手数は常に一定なのです。
10円玉の裏返しゲーム(偶奇性の不変量)
🪙 【問題】すべて裏にすることはできる?
机の上に表(平等院鳳凰堂が描かれている面)を向けた10円玉が5枚並んでいます。
あなたは1回の操作で、「好きな2枚を選んで同時に裏返す」ことができます。
この操作を好きなだけ繰り返して、すべて裏(数字の「10」が描かれている面が5枚)にすることはできるでしょうか?
💭 実際に10円玉を5枚並べて試してみてください。「裏4枚・表1枚」までは行けますが、最後の1枚はどうなるでしょうか……?
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【答え】絶対に不可能(何万回繰り返しても無理)
2枚の10円玉を選んで裏返すとき、「表の枚数」の変化パターンを書き出してみましょう。
- 【表】と【表】を裏返した場合: 表は2枚減る(−2)
- 【表】と【裏】を裏返した場合: 表が1枚減り、裏から表が1枚増える(±0)
- 【裏】と【裏】を裏返した場合: 表は2枚増える(+2)
どの2枚を選んでも、表の枚数は「2減る」「変わらない」「2増える」のいずれかしか起こりません。
奇数に偶数を足し引きしても結果は奇数のまま(奇数 ± 偶数 = 奇数)ですから、「表の枚数の偶奇(パリティ)」は絶対に変わりません。
スタート時の表は5枚(奇数)です。
すべて裏にするということは「表が0枚(偶数)」にすることですが、奇数から偶数へ移る手順が存在しないため、「絶対に達成できない」と数学的に証明できます。
「変わらないもの」を見抜く数学的思考
一見複雑に見える問題も、「操作によって何が変わって、何が絶対に変わらないのか」という不変の構造を抜き出すことで、無駄な試行錯誤をせずに真実に辿り着くことができます。
中学入試の数の性質や、コンピュータのアルゴリズム設計でも多用されるこの「不変量(インバリアント)」の視点。日常のふとしたルールやパズルの中にも、こうした数学の美しさが静かに息づいています。

