江戸時代の寺子屋で大ベストセラーとなった算術書『塵劫記(じんこうき)』。現代のビジネスパーソンや子どもたちの「思考力トレーニング」としても色あせない名問が数多く収められています。今回は、当時の米商人たちが暗算で使っていたとされる、美しい図形パズルに挑戦してみましょう。
【問題】米俵は全部でいくつある?
倉庫に米俵が三角形の形に美しく積み上げられています。
- 一番上の段(1段目):1個
- 2段目:2個
- 3段目:3個
- 4段目:4個
- 5段目:5個

【米俵の積み方(5段の場合)】
(上から順に 1個、2個、3個、4個、5個…)
このとき、全部で 15個 の米俵があります(1 + 2 + 3 + 4 + 5 = 15)。
では、ここからが本題です。
Q. もし一番下の段が「10個(10段積み)」だった場合、米俵は全部で何個になるでしょうか?
1から 10まで順番に足し算をせず、**「図形のひらめき」**を使って一瞬で計算してみてください!
じっくり考えてみてください…
全部で 55個 です。
【解説:同じ形を「逆さま」に合体させる江戸の裏ワザ】
1 + 2 + 3 + 4 +・・・・+ 10 と順に計算しても答えは出ますが、段数が増えると計算ミスが起きやすくなります。江戸時代の商人たちは、「同じ三角形をもう1セット用意して逆さまに組み合わせる」 という図形的な工夫で解いていました。
ステップ1:2つの山を合体させて長方形(平行四辺形)にする
元の俵の山(黒丸)の隣に、逆さまにした全く同じ俵の山(白丸)をピタッと噛み合わせます。
【2つの山を逆さまに合体させた図(平行四辺形)】
●:元の山(5段) / ○:逆さまにした山(1列あたり合計6個 × 5段)
どの段を見ても、黒丸と白丸を合わせると 「底辺の数 + 1」= 6個 ずつ綺麗に並びます。
ステップ2:掛け算して半分に割る
- 1列あたりの個数:5+1=6 個
- 縦の段数:5 段
- 2山分の合計:6×5=30 個
最後に、勝手に増やした白丸の分をなくすために 2 で割ります。
6× 5 ÷2=15 個
10段積みの場合の計算
この仕組みを使えば、10段の場合も一瞬です。
11×10÷2=55 個
「10×11=110、それを半分にして 55」と、誰でも数秒で暗算できます。
数学と歴史のつながり
この計算方法は、現代の高校数学で習う「等差数列の和の公式 n(n+1)/2」そのものです。約400年前の江戸時代の人々は、難しい数式記号を使わずに「図形をパズルのように組み合わせる直感」でこの公式を日常の商売に使いこなしていました。
計算を力技で解くのではなく、視点を変えてシンプルに捉え直すことこそ、あたまを柔らかくする最高の脳トレです。

